お願いポスト

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お願いポスト

俺の通っていた小学校の裏庭にある小さな林の中に、投函された願いを叶えてくれるという「お願いポスト」と呼ばれるものがある。 ただし、なんでも叶えてくれるわけではない、必ずルールがある。 1.嫌いな誰かに復讐して欲しいという内容である事。 2.相手の悪事をできるだけ事細かに書く事。 3.投函した事を誰にも告げない事。 4.攻撃対象にもバレない事。 つまり、丑三つ時のわら人形のようなものなんだと思う。 ある日の昼休み、クラスのA子とB子が喧嘩したらしく教室で罵り合っていた。 喧嘩は徐々にヒートアップし、先生を巻き込んでの騒動にもなった。 そんなことがあったものだから、午後の授業はすさまじく険悪な空気になる。 ぴりぴりした雰囲気の中、放課後にまた喧嘩が勃発した。だがB子が放った一言で場は凍り付く。 「あんたのこと、お願いポストに書いたから!」 それを聞いたA子の顔色はどんどん失われていき、膝から崩れ落ちて泣き始めた。その時になってB子もマズい事をしてしまったと自覚したのか、バツが悪そうに一人で帰ってしまった。 他の女子は懸命にA子を慰める。そのうちの誰かが 「そうだ!ポストから手紙を抜き取ればいいんじゃないの!?」と提案した。そうだそうだと盛り上がり、教室に残っていた連中総出でお願いポストに向かう。 ポストは、裏から鍵がかかっていて取り出すことはできないが、子供の細腕なら投函口から奥まで届くくらいである。 だが 「中になにも入ってないよ…?」 周囲がどよめく。そんなハズはない、きっとあるはずだとA子は必死になって中をまさぐるが、本当に中には何も入っていないのである。 結局、これはB子が投函したと嘘をついた、という事で決着しお開きになった。 家に帰り、夕食を終えテレビを見ていると、自宅の黒電話が鳴る。 受話器を取った母の顔が徐々に険しくなる。 「ねえ、A子ちゃん家に帰ってないらしいけど、心当たりある?」 背筋がぞくりとした。だがお願いポストの話をしてもわかってもらえるわけもなく、知らないとだけ答えた。 その後大騒ぎになり、大人達で捜索が行われた。 警察消防団はもちろんウチの両親も動員され、留守を命じられ家にいても外の喧噪は眠りに落ちるまでずっと聞こえていた。 そしてA子は、通学路からずっと離れた森の中で死体となって発見された。     
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