シンギュラリティの崩壊

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ついには連鎖する悪意の先に最悪の結果をも引き寄せた。 市井の下らぬ言い合いが、国の最高権力者にすら簡単に繋がるツールの呼び寄せた悲劇だった。 知り合いの知り合いを伝手に辿って行けば、たった六人で世界中の誰とでも繋がれると弾き出されていた計算の結果が、まさに狂った歯車を最悪の方向へと回したのだ。 『SNS』 ソーシャル・ネットワーク・サービス。 手のひらに収まる小さな機械に収まった大きな情報のうねりが、世界を悪意の言葉に翻弄させて核の焔で焼き払った。 世界へ向けて、簡単に発せられてしまう言葉が、世界を、人の営みを終わらせたのだった。 最早、誰が発した言葉がきっかけとも付かない言葉が。 もし生き残った人がその事実に辿り着けたなら、反省し新たに人類の復興を図っただろうか。 それとも、その言葉を発したものを呪い続けただろうか。 怒りの矛先を向けただろうか。 折角逃げ込めたシェルター内ですら争い死に絶えた人は。 不用意な言葉一つに怒り狂ってしまった愚かな知性は。 無人の中、僅かな電力に因って起動していたネットワーク内に謝罪の言葉が綴られて行く。
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