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真っ黒に染まった夜の森。そこには二つの人影があった。
一つは、二十代半ばといった風貌の青年。
一つは、タキシードに身を包んだ老紳士。
「貴様が私を呼ぶとは…明日は雪でも降るかな?」
「ああそうかもな。──まあ明日なんざ、あんたにゃ関係無い話だが」
一つの人影の腕が、もう一方の腹部を突き刺す。
「ぐはッ…ぁ……ガミジン、貴様……!?」
「くくっ……貰うぜ、あんたの”記憶”をなぁ!」
ずるり、と。老紳士の腹部から腕が引き抜かれる。
その手にはUSBによく似た、「A」と書かれている黒色の端末が握られていた。
「くはッ!くはは!…こいつはガイアメモリつってな、星の記憶を内包した記憶端末なのだとさ。
俺は生物から、その記憶をガイアメモリとして抽出する技術を編み出した。始めに──」
『フェニックス』
「──奴の屍からコイツを生み出した。そして、だ」
ガミジンと呼ばれた青年は、手元の「F」と書かれたガイアメモリを、腰に巻かれたベルトのバックル部分──黒いロストドライバーのポケットへと挿し込んだ。
「変…身…!」
『フェニックス』
メモリごとポケットを斜めに傾けると、彼の全身が赤と黒の入り交じった炎に包まれる。
黒を基調とした、赤く燃え上がるような炎の意匠が特徴的な戦士──仮面ライダーとなった。
風に旗めく赤いマントからは、それが唯の飾りでない事を強調するかのような禍々しい力を感じる。
「くはッ!……さあ、永眠の時間だ!」
「ガミジン、貴様…我ら七十二柱の全てを裏切るつもりか!」
「つもり、じゃねぇ…裏切ってんだよぉ!」
「この大空け者がぁぁぁ!!!」
青年と、老紳士が衝突する。しかし───。
「ぐぉぉぉッ!?何だ…この力は……ッ!!!」
「瀕死のテメェが、この俺に勝てるわけねぇだろ!!!」
『デスティニー、マキシマムドライブ』
ガミジンが「D」のガイアメモリをベルト側面のポケットに挿し込むと、彼以外の全てがその動作を停止する。
「───デスティニー・ジ・エンド。テメェの運命は”死”だ」
そして、再び動き出す。
アガレスは何が起きたのかを知る事もなく、その直後に灰となった。
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