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「段々と馴染んできているようですね、そのメモリ」
「あ?…ああ、アンタか」
木陰から歩み寄ってきたのは、オールバックの青年。
若く整った容姿だが、そういった外見的な優位点を無表情が台無しにしている。
「相変わらず無愛想な面だなぁ、加頭順」
ガタン、と音を立てて彼の持っていたアタッシュケースが地面に落ちる。
「くくっ……冗談だ。それより、何の用だ?」
「はい。貴方を更なる高みへと導く物が完成いたしましたので、その譲渡に」
「つまり、次の実験ってこったな」
加頭と呼ばれた青年はアタッシュケースを開き、そこへ収納されていたものを取り出す。
「貴方用に調整された、ダブルドライバーです」
「ほう…?」
「二つのメモリを併用することで、戦闘能力を格段に上昇させるアイテムとなっています。
その分、負担は大きいですが」
「構わねぇよ、寄越しな」
ガミジンが手を差し出すと、加頭も「では」とケースの中身を手渡した。
「このフェニックスメモリの力で、今の俺は不死と再生の力を手に入れている。過信は禁物だが……まあ、メモリの負荷程度なら問題無ぇだろうさ。
───と、そうだ忘れるところだったぜ」
ガミジンはスーツのポケットから「E」と書かれたガイアメモリを取り出すと、加頭に投げ渡す。
「………これは?」
「エルドラドメモリ…の試作品といったところだな、完成品じゃねぇ。単体じゃ大した効果は得られねぇが、他のメモリとの併用で一時的にではあるが文字通り無敵化できる筈だ」
「……つまり、私に被検体になれと?」
「簡単に言えばそういうこった。こんな危険な代物、アンタぐらいじゃないと使えねぇだろ?
まあ、使うか捨てるかはアンタに任せるさ。だが…今のままじゃ、進化し続ける”あの男”には勝てねぇぜ」
意味深げにそう言うと、ガミジンは「じゃあな」と手を振って陽炎のように消えた。
加頭順は掌のガイアメモリを暫く見つめた後、強く握りしめる。
「………大道…克己…」
真っ暗闇の中で独り呟いた。
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