序章──Xの組織、運命の悪魔──

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大和王国、王都立天青(てんせい)大学付属高等学校。 俗に天青高校と呼ばれるこの学校は、世界でも五指に入る程の名門魔法学校だ。 規模ではクラウディア王国のマギアクラウン魔導学園に劣るものの、此処を卒業した人間の殆どが安定した職業に就けているなど将来性は高い。 また、女子生徒はセーラー服、男子は学ランと呼ばれる学生服の着用が義務付けられている。 これらは機能性において他国の制服に劣るが優れた防御性能を誇る。 因みに、私の所属は第三学年一組だ。 胸元に着けている「Ⅲ」の金バッヂは学年を象徴しており、一年生が銅の「Ⅰ」、二年生が銀の「Ⅱ」となっている。 また、生徒会には白金のバッヂが与えられ、一目でそれと分かるようにしているそうだ。 「で、話とは何でしょうか?」 その生徒会に、私とハルカは呼ばれていた。 眼前の机の前に立つ少女、同級生でありながら私より遥かに高い身長と威圧感を持つ彼女は生徒会長だ。 胸元の白金バッヂの他、左腕には生徒会長の証である赤い腕章が装備されている。 「うむ、では単刀直入に言おう。……我等が生徒会に入ってはくれないか」 「お断りします」 「俺で良けれ──は?」 流石に、予想出来ていた事だ。 現に隣のハルカは既に答えを決めていたようで、会長の言葉に快い答えを返そうとした。 ………だが何故、二人して私を見るのだろうか。 「セツナ、お前正気か?」 「生徒会加入を断ったぐらいで正気を疑うのは如何なものかと思いますよ、ハルカ」 「ふむ……理由を、聞かせてもらえるだろうか」 真剣な眼差しで訊ねる生徒会長へ、私は幾つかの理由を説明した。 一つ、単刀直入すぎて説明不足が甚だしい。 二つ、興味が無い。 三つ、個人的な慈善活動で忙しい。 四つ、消費される時間と労力に見合った報酬が提示されていない。 説明し終えると、彼女は納得したように頷いた。中性的な顔立ちも相まって、だいぶ様になっている。 「確かに、君の言う通りだな。私とした事が功を焦ってしまったようだ。 ではまず、勧誘の理由を説明しよう。……それは即ち、人員不足だ」 「不足、ですか?」 ハルカが訝しげに訊ねるが、それも仕方が無いだろう。 生徒会といえば優れた人材を豊富に持ち、その質と量の両面で以てあらゆる異常を解決する生粋のエリート集団だ。それが「人員不足」とは、考えられない事態である。
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