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此方に振り返った七夏ちゃんの顔が、俺の目の前にあって、かなり驚いた。もうひとつ驚いたのは、間近で見た七夏ちゃんの瞳の色が、左右で異なっていた事だ。この理由は分かる。見る角度によって色が変わる「ふたつの虹」に近づけば、視点に対し、ふたつの目の注視点の間隔は広くなる。「オッドアイ」のように見えたふたつの虹・・・これは、今までは「見えていない虹」であった。
時崎「ごめんっ!」
七夏「いえ、私こそ、びっくりしちゃって」
凪咲「七夏!? どうしたの?」
今の大きな声で、凪咲さんが声をかけてきた。
七夏「な、なんでもないですっ! 柚樹さん、ごめんなさい。また後でっ!」
そう言うと、七夏ちゃんは慌てて自分のお部屋に戻ってしまった。後で謝っておかないと。
時崎「凪咲さん。三面鏡、ありがとうございました」
凪咲「はい」
時崎「ちょっと、七夏ちゃんに謝ってきます」
凪咲「大丈夫じゃないかしら? 七夏、恥ずかしがっているだけみたいだから」
時崎「え? そうなのですか?」
凪咲「七夏、『また後で』って、言ってたから」
そう言えば、ちょっと焦ってて気が付かなかったが、確かに「また後で」と言われた気がする。
時崎「ありがとうございます」
凪咲「柚樹君。和菓子があるから、どうぞ。後で七夏にも渡してくれるかしら?」
時崎「はい。ありがとうございます」
結局、七夏ちゃん自身は、瞳の色が変わる事・・・「ふたつの虹」は「見えていない虹」となっている。俺は、七夏ちゃんに本当の瞳の色を伝えてあげたいと思い、なんとかその方法がないか考える事にした。
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