第四十二幕:見えない虹に気付く時

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七夏ちゃんは、カニの幼生がななつ・・・つまり、七匹いると言いたいという事が分かった。しかし、俺の目にはカニの幼生が七匹どころか無数に居る様に見える・・・とてもじゃないが数え切れない。七夏ちゃんは虹以外にも、他の人と感覚の違う物があるのかも知れないと、少し不安になってきたから、俺は訊いてみた。 時崎「えっと、七匹どころか、無数にいない?」 七夏「え!?」 時崎「ほら、こんなに沢山、くるくると回って・・・」 七夏「あっ!!」 七夏ちゃんにも、それが見えていたようで、ほっとした。 七夏「柚樹さん☆ それは、カニの幼生さんではないです☆」 時崎「え!?」 七夏ちゃんの言葉に俺は驚く。このくるくると無数にまわっている生き物が、カニの幼生ではないとすると・・・。 七夏「見えませんか?」 時崎「え!?」 俺は、目を凝らして水槽を眺める・・・くるくると無数にまわっている生き物以外に、何も見えない・・・。 七夏「えっと、この辺り・・・です☆」 俺は、七夏ちゃんが教えてくれた付近を目を細めて見てみる・・・。すると、なにやら雪の結晶のような透明な物体が、すーっと七夏ちゃんの手の付近を横切ってゆく。その透明な物体は一瞬キラッと虹色のような光を放った。その光が水槽照明の反射光である事はすぐに理解できた。 時崎「あっ!?」 七夏「くすっ☆ 見えました? ゆらゆらと♪」 時崎「あー! これが、カニの幼生だったのかっ!!!」     
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