第十三幕:虹はいつまで見えている?

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今までの事と、これからの事をまとめてみる。俺の撮影した笑顔の七夏ちゃん・・・その写真を見た凪咲さんから、改まって写真撮影のお願いをされた。その理由を訊いてみると、ある時期から七夏ちゃんは写真撮影に対して消極的になり(拒む訳ではない)、レンズに視線を送らなくなったり、目を合わせなくなったり、目を閉じる事が多くなったらしい。過去の七夏ちゃんのアルバムを見せてもらうと、ある時期(小学3年くらい)から枚数減っているのが分かる。凪咲さんはその事をずっと気にしていたようで、俺の撮影した写真に存在する「凪咲さんにとって、久々に見た七夏ちゃんの笑顔の写真」を、じっと見入っていた。七夏ちゃんが何故俺に対して写真撮影を拒まなかったのか、その理由は今は分からない・・・いずれ七夏ちゃん自身から話してくれるまで、その事はそっとしておくべきだろうと思った。 滞在期間の延長と、風水でのお手伝いをする事を七夏ちゃんに伝える為、俺は七夏ちゃんの部屋へ向かう。 時崎「七夏ちゃん!」 七夏「はーい☆」 七夏ちゃんが部屋から顔を見せる。 時崎「七夏ちゃん。今、いいかな?」 七夏「はい☆ あ、どうぞです♪」 時崎「ありがとう」 七夏「えっと・・・」 時崎「あ、ごめん。今回の旅行の滞在期間の事なんだけど・・・」 七夏「あ・・・」 七夏ちゃんの顔が少し曇る・・・これは一瞬嬉しく思ってしまったが、人の悲しみを嬉しく思ってはならない。ましてや、大切な存在であれば、尚の事である。 時崎「七夏ちゃん?」 七夏「えっと、柚樹さん・・・バス停で、一週間くらいって話してました」 時崎「確かに、そう話してたね」 七夏「今日・・・お帰りになるのですか?」 民宿育ちの七夏ちゃんにとって、お客様との突然のお別れは、そう珍しい事ではないのだろう・・・突然帰ってしまう心積もりが出来ていての『今日』なのだと思った。 時崎「いや、もう少し、ここでお世話になるよ」 七夏「え!?」     
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