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そう言うと、七夏ちゃんは、小説コーナーへ向かったようだ。俺は、写真関連の書籍を探してみる。ふと一冊の書籍が目に留まる。「空」と「虹」をテーマにした写真集だ。俺は自然とその写真集を手に取り、その世界へ飛び込む。その世界の写真は、俺が思っていたよりも鮮明に虹を捉えていた。虹ってこんなにコントラストがはっきりしているのか。何か後から写真を加工しているのではないかと思えるほどだ。この書籍の虹と比べたら、自分の撮影した虹は「見えていない虹」のように思えてきて、少し切ない。
時崎「ん? これは・・・?」
その写真集のはっきりとしたコントラストの虹の一つ外側にもう一つの虹が写っていた。その外側の虹は「副虹(ふくにじ)」と言うらしい。俺の撮影した虹のコントラストはまさに「副虹レベル」だ。その写真集の他の虹の写真にも目を凝らしてみると、いくつかの写真で副虹か確認できた。
時崎「意識しないと、見えない虹もあるのか・・・」
さっき見た時は、全く副虹の存在に気付かなかった写真もいくつかあったが、意識して見てみると、見えていなかった虹・・・副虹が浮かび上がってきた。俺は思った・・・機会があれば、この副虹も撮影してみ・・・っ
七夏「柚樹さん。柚樹さん!!」
気が付くと、隣に七夏ちゃんが居た。
時崎「あ、ごめん。七夏ちゃん」
七夏「くすっ☆ とても夢中になってたみたいですね」
そう言われて妙に恥ずかしいが、否定は出来ない。結構な時間、その写真集に噛り付いていた事は確かだ。
七夏「私も、夢中になったりする事がありますので」
七夏ちゃんは、本に夢中になっていた俺の姿を見て、自分と同じ心境である事を、すぐに理解してくれた。
時崎「ありがとう。七夏ちゃん。用事は済んだ?」
七夏「はい♪ お待たせしました」
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