第六幕:太陽があって虹は輝く

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天美さんは、俺と七夏ちゃんの会話を聞きつつ、俺の手元をじっと見ている。その視線の先には、写真機があった。写真を撮ってほしいのかとも思ったが、天美さんの表情から、その逆の意思である事は明らかだ。完全に警戒されている。天美さんも写真に対して、あまり良い印象を持っていないのかも知れない。俺はその真意が分かるまで、天美さんの前では写真機や写真の話題は控えようと思った。俺が天美さんに会釈すると、天美さんは、ちょっと困惑気味の表情を浮かべつつも、軽く会釈を返してくれた。 七夏ちゃんとは随分印象が異なる天美さん。民宿育ちで、凪咲さんのお手伝いをしている七夏ちゃんは、人当たりがよく、気も利くので、それに慣れてしまっていた。冷静に考えると、天美さんの反応の方が一般的だと言える。七夏ちゃんと話す天美さんの様子から、本当の天美さんは、明るくて元気な女の子だと俺は思っているし、それは間違ってはいないだろう。 七夏ちゃんと天美さんを見送った後、隣の広間を見渡すと大きなテレビ・・・お客様用だろうか。テーブルの上には、そのテレビ用と思われるリモコンが置いてある。俺はそのリモコンを手に取り、眺めていると・・・ 凪咲「テレビ、ご自由にご覧くださいね」 時崎「ありがとうございます。随分大きなテレビですね」 凪咲「はい。少し前まで小さなテレビだったのですけど、故障してしまって・・・」 時崎「そうなのですか?」 確かに、大きなテレビは、年季の入った部屋に対して、明らかに時代が異なる印象を受けた。 凪咲「それで、遠くからでも見れるように考えたら、この大きさになりました」 時崎「なるほど」 凪咲「あと、七夏がテレビに近づき過ぎないように・・・という意味もあるかしら」     
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