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俺は、七夏ちゃんの目の特性が少し個性的である事を、なんとなく分かっていた。赤緑型色弱とは少し異なる特性のようだが、いずれにしても、七夏ちゃんが持って生まれた個性だ。七夏ちゃんがその特性を負い目に思ってしまわないよう、凪咲さんと直弥さんは配慮されている・・・というよりも、普通の事として認識している。俺は七夏ちゃんの力になれるかと思い、赤緑型色弱について、少し調べていた。これは知っておく方が良いのか、知らない方が良いのか・・・。それとも、知っていて知らない事にするのが良いのか・・・いや、しっかりと知った上で、自然に接する事が大切なのだと思う。それは、凪咲さんと直弥さんが、七夏ちゃんにそうしているのが答えだと思う。俺は、それに加えて、七夏ちゃんが、もっと喜んでくれる事を考えるべきだと思った。
凪咲「虹の色は七色って言うでしょ?」
時崎「え!? は、はい」
凪咲「七色って、色が特定できないとも言えるわ」
時崎「そう・・・なりますね」
凪咲「だから、見た人の数だけ、虹の色はあると思っているの」
時崎「確かに、俺が見た虹色と凪咲さんが見た虹色が同じだと証明するのは難しいですよね」
凪咲「そうね。でも、それを証明する必要って、あるのかしら?」
時崎「え!?」
凪咲さんの言葉に、神経が掻き毟られるような思いを覚える。俺が行おうとしている事を否定されたような気がして・・・。七夏ちゃんに本当の虹を見せてあげたいと思うのは間違っているのだろうか・・・。
凪咲「昔、七夏を抱きながら虹を見たことがあるの。私は『きれいね!』って七夏に話したけど、まだ七夏は幼かったから、虹そのものを分かっていなかったかも知れないわね。あの時、一緒に見上げた虹・・・七夏にはどんな色に見えていたのかしら?」
時崎「・・・・・」
凪咲「私には、私の虹色があって、七夏には七夏の虹色がある・・・それだけの事よ」
時崎「・・・・・」
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