第二十四幕:のんびりさんの虹

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俺はそっとその場を離れ、自分の部屋に戻る。写真屋さんでプリントした素材を切りながら「とびだすアルバム」の試作品を作ってゆく。ページを開けると、虹が立体的に飛び出す仕掛けを作ってはみたが、これはどうなのか・・・。七夏ちゃんは、虹の話題があまり好きではない。だけど、虹を好きになろうと努力をしてくれているのも分かる。そんな不安定な心の状態の時に、虹をテーマにしたアルバム、しかも、その虹が飛び出してくるというのは「押し付け」になってしまわないか? 七夏ちゃんに相談したいけど、これは、渡す時まで秘密にしておきたい。虹以外で飛び出す要素を考える方が良いのかもしれないな。俺は、七夏ちゃんに虹を見て幸せな気持ちになってもらいたい。どうすればいいのだろうか。1時間くらい考えを巡らせているだけで、作業は殆ど進まない。喉が渇いてきたので飲み物を頂きに一階へ下り、和室を通りかかる。七夏ちゃんは、まだうたた寝してい るようだ。よく見ると、さっき俺が掛けた毛布が体にきっちりと巻きついている・・・って、これは・・・その時--- 七夏「んん・・・」 七夏ちゃんが目を覚ましたようで、うっすらとした眼差しで辺りの様子を確認しているようだ。 時崎「おはよう。みのちゃー?」 七夏「・・・っ!!!」 俺は、以前に天美さんが話していた、七夏ちゃんのあだ名の意味が分かった気がしたので、試しにそう呼んでみたら、当たりだったようだ。七夏ちゃんは、毛布の中に一度顔を埋めてから、再び目だけ覗かせて此方を伺ってきた。 七夏「・・・その呼び方・・・どおして!?」 時崎「見た印象がそうだったので。気を悪くしたのなら謝るよ」 七夏「うぅー」 時崎「その・・・ごめん」 七夏「いえ。別に・・・ちょっと、恥ずかしいなーって・・・」 時崎「この前、天美さんが話していた事を思い出して・・・」 七夏「そうだったのですね。あ、毛布、ありがとうです☆」 時崎「あと、眠っている七夏ちゃん。とても心地良さそうだったので、一枚写真を撮らせて貰ったんだけど」 七夏「え!? 今の姿をですか!?」 時崎「いや、俺が毛布を持ってくる前の七夏ちゃん」     
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