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・・・大切な事を思い出した。最初に七夏ちゃんの写真を撮らせてもらった時、七夏ちゃんの瞳の色が、虹色/七色ではなかった事・・・撮影した全ての七夏ちゃんの写真の瞳が翠碧色になっていた事。俺は七夏ちゃんの本当の瞳の色を確かめたくて、もう一度会いたいと思った。しかし、七夏ちゃんと再会出来て、一緒に過ごす時間の中で、瞳の色の事よりも七夏ちゃんの心の方が印象深くなってしまっていた。今、写真機の液晶画面に映っている七夏ちゃんの瞳の色こそが、撮影した時に記録される色だという事・・・つまり、本当の七夏ちゃんの瞳の色を撮影し、記録する事は出来ないという事になるのか・・・そんな事を考えていると、七夏ちゃんは写真機と俺から少し距離をとった。
時崎「七夏ちゃん」
七夏「・・・・・」
七夏ちゃんは無言のままだ。先程まで涼しいと思っていた海風が、少し肌寒く感じる。恐らく、七夏ちゃんは過去にもこの様な事があり、写真に良い思い出がないのかも知れない。考えられる事は、七夏ちゃんの目の前で何かの実験のように、興味本位で写真を撮りまくり、見せ物感を七夏ちゃんに与えてしまう事・・・。ここで俺が、更に上塗りしてはならない。写真機をケースにしまう。撮影は、これでおしまいにしようと思った。
七夏「あっ!」
無言で佇む七夏ちゃんの頭に、大きな帽子をそっとかぶせてあげる・・・。七夏ちゃんがこちらに振り返り、視線を大きく動かす・・・瞳の色も大きく変化する・・・どうやら、写真機を探しているようだ。
七夏「柚樹さん・・・写真・・・」
時崎「ん? 写真なら、もう良いのが撮れたから」
七夏「・・・・・」
七夏ちゃんは、不思議そうな顔で此方に視線を送ってくる。俺は、その翠碧色の瞳を見て安心する・・・七夏ちゃんが、しっかりと此方を見てくれている事が伝わってくるから。
時崎「そうだ、七夏ちゃん!」
七夏「は、はい!」
時崎「可愛い七夏ちゃん撮れたよ!」
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