君が大好き!

エクリプスィ

　大津は新宿署に応援に行っているし?
　朝野も姿が見えない。
　鮪はバーテンの方のギリシア人の取り調べを行っていた。彼はランフォスと名乗った。
　ギリシアでクチバシを意味する。
　ランフォスはある程度、日本語が理解できるらしい。赤はコキノ、ピンクはロジ、オレンジはポルトカリと言うらしい。
「ギリシア料理のファバはなかなか美味しいよ?ファバって分かる?」
「イヤ」
「サントリーニ島のファバって豆を茹でて作るディップね。オリーブオイルとパンを添えて食べる」
「うまそうだな?」
「ムサカなんかもオススメだよ?」
「六平?」
「そんな名前の俳優さんいるよね?挽き肉とジャガイモ、ナスを重ね焼きしたものだよ」
「うまそうだな?」
　ナカナカ愛らしい青年だ。
　彼の乳首を舐めてみたい。
「ギリシアだと酒は何がうまい?」
「ドメイン・スピロプロス・ボルフィロスとかいいよ?赤ワインなんだけどさ?ブラックチェリーとレッドベリー、スパイシーなカシスをミックスさせたものだよ?」
「ドメイン・スピロプロス・ポルフィロスじゃなくて?それなら俺も飲んだことがある」
「アァッ、ボルじゃなくてポルだったか?」
「酒には目がなくてね?何せ昔はドブロク刑事って呼ばれていたくらいだ」
「目がないってどーゆー意味ね?日本語難しい」
「好きって意味さ」
　アポロン、ゼウス、ヘラ、アフロディーナ、アレス、アルテミス、デメテル、ヘファイトル、ヘルメス…………これで9つ、十二神のうち残り3つが分からない。

「ところでアポロンとはどーゆー関係だ?」
「アポロンはエクリプスィを倒そうとしていた」
　ёкλёιψη…………日蝕を意味する。
　太陽の神が蝕と戦う神話みたいな話だ。
「エクリプスィってのは何だ?」
「ホームグラウンドテロならウナギさんも聞いたことがあるでしょ?」
「ウナギじゃなくてマグロだ」
「ジョークよ?マグロだけに何にも感じないの?」
「エクリプスィってのは何をしようってんだ?」
「エクリプスィがなくなると?」
　蝕がなくなる!失職!?
「そりゃまずいよ!ランフォスちゃん」
「エクリプスィが壊滅すると大変なことになる」
　失職者による犯罪を幾度となく見てきた。
　エクリプスィってのは本当は正義の味方なのかも知れない。
　ランフォスは蛭田のことが気になって仕方なかった。うまく誘き出してくれよ!?