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悪徳介護施設
「ベロナールをゲットしたぜ?」
「どこで手に入れたの?」
「クラベから」
「保健室に運んでおいて」
「子供たちを犠牲にするの?」
「ベロナールなら子供でも飲める、酒に混入する必要がない。何て画期的なんだ?」
「血も涙もないのね?」
「署長からの命令だ、逆らったら春奈署にいられなくなるぜ?」
樹里は何とか臨時教師としてガンバっている。
けれども、あくまで臨時だ。
いつ切られるか分からない。
教師の数を多く減らす!これが次のミッションだ。
「おまえは今日から薬剤師だ」
樹里の勤務している学校は朝野病院と提携している。
「先輩に向かっておまえはないでしょう?」
「うぜーよ!1人だけ生き延びやがって」
「西名くんも生きてるよ?」
「西名くんとはやった?」
「ガタイがいいわりにあっちは小さかったわ?子宮に届かなかったわ」
「大津くんって体は女なの?見た目はオッサンだけど?」
「朝野くんも試してみる?イソギンチャクみたくってキッモチーゾ?」
バファリンのパッケージのナカにベロナールを入れた。ちゃんとBってマークをつけてあるから保健室の先生にバレることはない。
「断頭台に行きたいのか?おまえ、ベルリオーズを聴いて何を学んだんだ?」
8月から樹里は吹奏楽部の先生をしている。
日本史の先生なのに吹奏楽部を任せられた。
何故か?
音楽のイナダ先生が帰宅途中に居眠り運転であの世に旅立ったのだ。眼鏡の似合う可憐な先生だ。
不倫して自暴自棄になってSPEED違反したばかりだ。
「いーじゃねぇかよ?アイツのオヤジ、介護施設経営してるけどサービス残業なんだぜ?生きてる資格あるのかよ?従業員路頭に迷わせてるんだぜ?」
チェロ担当の三雲アサミは男っぽい口調だ。
アサミが敵視しているのは鈴木ナナカってゆーお嬢様だ。アサミの父親はヘルパーをしていたが、虫ケラ同然に扱われて自殺した。
ベルリオーズの『幻想交奏曲』は夢と情熱や舞踏会、野の風景、断頭台への行進と滑り台時代と呼ばれる平成時代を風刺しているような曲だ。
「失恋したくらいで自殺するなよ?」
アサミが涙をポロポロ溢した。
イナダ先生が不倫をしていたことは公になっていない。
「昏睡状態だったからさ?愛人を刺し殺したとか叫んでいたのかな?」
保健室のイズミ先生が楽しそうな顔をして言っていたのを樹里は覚えている。
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