3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
枕
悪い奴らが街に蔓延る。
戸倉殺しの現場にはメモ帳が置いてあり、謎の言葉が書かれてあった。
唐崎、志賀、打出浜、瀬田橋、位山…………なるほど、枕詞…………つまり、犯人は枕営業をしていた!?
戸倉はゲイバーのマスターだ。
他の刑事に俺の推理を聞かせるわけにはいかない。唐崎は正確には辛崎なのだが、戸倉が間違ったのだろう。
イマドキはWikipediaもあるし、万葉集を知らなくても《枕言葉》を入力するだけで教授モドキになれる。戸倉はバカそうな顔をしている、きっとゆとり世代だ。
しかし、意味が分からんぞ?枕営業ってワザワザ残すかな?枕崎とかって人物なのかも知れない。
「大津さん?いったい、何を考えてるんです?」
後輩の朝野に探られそうになった。
「なんでもねーよ」
朝野もゆとり世代だ。少しは頭を使え!
「後輩には優しくしろよ?」
鮪警部補に叱られた。
鮪は何にも感じない。戸倉は背中にアイスピックを刺され血みどろなのに。
「征一?あれ?征一じゃない?」
聞き覚えのある声だ。貴幸!?何で、アイツがここに?マズイ!俺がゲイってことは誰も知らないんだ。
「タカちゃん?な~に?大津と知り合いなのかしら?」
鮪が裏声で言った。まっ、まさか、コイツ猫なのか?貴幸は犬井貴幸ってゆーんだけど、本性は猫だ。
「うん、昔の恋人」
「なっ、なに~!?貴様、ソッチだったのか?早く言えよ?署長に掛け合っておいてやるよ?ゲイならゲイって言えよ~?今までヒドイ扱いだったろ?うん、分かるわよ?もう、悩まなくていいわよ?」
鮪が乳首をYシャツの上からツンツンしてきた。
かっ、感じる!猥シャツ。
「嬉しいような?悲しいような?」
「貴幸、関西弁じゃないのね?」
「矯正されたよ東京弁に、関西弁喋ってたらアッパーカット食らわせられて」
「ひどーい、誰からぁ?」
「カンチってゲス野郎」
「どーゆー字を書くのかしら?」
「関ヶ原の関に知るって字」
「関知ねぇ」
「で?貴幸は今の役職は?」
「ゲイ察官」
「ふざけないで!?真面目に話してるんだからぁ?」
「本庁捜査一課の管理官ですわよ?」
警視かよ!
「春奈署にはなれたかしら?」
春奈駅のすぐ近くにあるお洒落な洋館!それが春奈署ですのよ?
「ええ、とっても快感よ?」
「快適じゃなくて?」
スマホが鳴った。
「あったしー大津征子~」
最初のコメントを投稿しよう!