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部長のデスクの前で、いまひとつ要領を得ない説明を、眠気をこらえて聞きながら、もし本当に魔法少女になれたら……と、忠信は妄想する。
こんな不毛な日常から解き放たれて、思いっきり楽しめるだろう。魔法で悪魔と戦うなんてスリルがあっていいじゃないか。
「佐藤くん、聞いているのかね?」
部長の説明が終わっていたらしい。
「はい、わかりました、すぐに取りかかります」
忠信は現実に引き戻された。
そんな感じで今日は一日、仕事が半分、妄想が半分という具合に時間をすごした。
いつものように形ばかりの定時になり、まだ終わらない仕事の進捗状況にうんざりして、気分転換に事務所の外のエレベーター近くにある自動販売機でコーヒーでも買って飲むかと、カバンの底に入れた財布をゴソゴソと探していると──。
なにか覚えない手触りがあって、取り出してみた。
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