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「おじさん、しっかりしてください、おじさん──」
体を揺り動かされていた。
佐藤忠信は目をあける。硬いアスファルトの感触をスーツごしの背中に感じ、なにがあったのか思い出した。
上半身を起こした。
声をかけていたのは、ローティーンの美少女だった。フリルのついたピンクのノースリーブがひどく場違いだった。忠信のカバンを胸に抱いてる。
「気がついた、よかった……」
少女は心底安心したように大袈裟な仕草でホッと胸をなでおろす。
しかし一方の忠信の頭の中は?マークでいっぱいである。とはいうものの、事情説明を求めるべきかどうか迷いどころだった。なんだか関わってはいけないような匂いがプンプンして、忠信はいろんな意味での〝危険〟を感じていた。明日も仕事がある。忙しいのに余計なことに首を突っ込んでいる場合ではない。
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