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「帰って休まないとな。どうやらおれは相当疲れているらしい。幻が見えるし、幻聴も聞こえる」
ぶつぶつとつぶやいた。それでなにもかもが消えてしまうことを願って。だが現実はいつも期待を裏切る。
「わたしは幻でもなければ、この声は幻聴でもないわ。正真正銘、現実なの」
自称・魔法少女が顔を近づけてきた。髪飾りがオモチャのような安っぽいデザインだった。
「こんな夜遅くまで仕事に追われ、毎日毎日砂を噛むような彩りのない暮らし。たまの休みの日は泥のように眠るだけ。そんな人生に、いたいけな魔法少女マジカルキャンディとなって悪魔と戦うやりがいのある使命を受けるなんて、これ以上身が震えるほどの興奮なんか他にないわ。このまま帰ってそのコンビニ弁当食べても草でもはんでるように味なんかしないでしょ? そのほうがいいの?」
立て板に水のようにまくしたてられて、忠信は圧倒される。
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