4【相合傘】

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 彼は、優しい。 彼は優しいのだと彼女は思った。 今感じているこの気持ちは、不安でもなく気まずさでもなく、ただ安堵だ。 濡れないように守ってくれる人が一人いるだけで、こんなにも違うのだと知った。 そっと寄り添ってくれる彼は、泣いていた私にあたたかな気持ちをくれた。 傘を傾けると背を向けた彼に小さく礼を言い、雨降る空を見遣る。 今は、彼に甘えてもいいのかもしれない。 雨が止むまでは。 私の心が、晴れるまでは。
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