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「――ぁっ!」
急に手へと鋭い痛みが走る。堪らず口の中で声を上げていた。気がつけば、うなりを上げながら飛んでいく金の髪。
慌てて視線を戻す。二人ともやっぱりこっちを気にしてるそぶりはなく、目の前の戦いに集中しているようだった。
偶然なのか。それにほっとすると同時に、ずきずきと痛む赤い手が、これは紛れもない現実なのだということを教えてくれる。
戦況は早くも膠着しているようだった。ギャルと大和撫子、金の髪と茨はにらみ合いを続けたまま、決定打を出せずにいる。
どうする。――どうすればいい?
自分も何かしなくちゃと思いながらも、何が出来るかもわからない。そもそも、どっちの味方をすればいいんだろう。
焦れる心に足下が揺らぎ、じりり、とサンダルが地面を踏みしめる音が、やけに大きく聞こえる。
上げた顔の先には、こちらを見るギャルの目があった。
まずい。
思った途端、金の髪の一房さが鋭く尖り、今度は確実に俺を狙って飛んでくる。想像以上のスピードに、手も足も動いてくれない。動かせたのは、目蓋だけだった。
――が、衝撃はなかなかやって来ない。
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