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その先に見える苦しげな大和撫子。これは本格的にマズイんじゃないだろうか。
頼む――頼む! 何とかなってくれ!
何とかって何なんだよと自分でも思ったが、俺は茨を掻き分けて進もうとしながら、強く願い続けた。
それが、本当に届いたんだろうか。
好き勝手に動いていた茨の動きがぴたりと止まった。ぐったりと落ちたのではなく、空中で静止した状態だ。
そして、急に訓練された兵士のように統率の取れた動きで、素早く大和撫子を締め上げている金髪に、猛攻撃を始めた。
ぶちぶちと髪が切れる音が周囲にまで伝わる。ギャルは悲鳴を上げると堪らず髪を解き、引き戻す。
しかし茨はそれを執拗に追った。そのままぐるぐると絡み付いて離さない。
金髪も茨もお互いに譲らず、まるで巨大な綱を引き合っているかのようだった。
力と力の駆け引きが続き――唐突に、全部の茨がぱっと髪から離れる。
「きゃっ」
急に解放され、バランスを崩したギャルは、地面の上に転がった。
彼女は痛そうに呻いたが、すぐに身を起こそうと体をよじる。
次の瞬間、その体を地面へと縫いとめるかのように、いくつもの棒状のものが周囲へと突き刺さった。
「糸――?」
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