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愛が思い通りにいくと思うな
男という生き物が、嫌いだ。
男というだけで女たちに愛され、男は女たちを性的に値踏みする。その眼差しは形容しがたい欲望と浅ましさでできている。私は男という生き物が嫌いだ。だからニキからの提案は私には理解しがたいものだった。
インスタントのカプチーノとトーストに目玉焼きで簡単な朝食をとっている最中だった。
「ねえ、そろそろ欲しくない?」
ニキはお伺いを立てるように私を上目遣いで見てきた。ニキが私に対してよく取るおねだりのポーズ。それを繰り返して、もう七年目になるのか、と私は自分に感心した。
「なにを?」
「質問を質問で返さないで」
「なにが欲しいの? エスプレッソ・マシンなら買わないよ」
クリスマスのときにニキから強請られたマシンは朝食でしかコーヒーを飲まない私たちにしては高価すぎる。
「違うよ。結子って鈍感だなあ」
そう言ってニキは愛おしそうにお腹をさすった。ニキの生理は二週間後だよなあ、と思いながら、私はまさかと思って新聞に落としっぱなしの目線をあげた。
「私、結子との赤ちゃんが欲しい」
ニキの屈託のない笑みに、私はカップを落とすところだった。
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