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ニキは朝の話の続きをしたくて堪らないらしい。私はこうなることを見越してわざとお酒を飲んで来て、遅く帰ってきたのに。謝るのはいつも私の方だ。
「朝の件だけど……」
「ちょっと飲みすぎちゃったから、とりあえずお水が飲みたい」
言葉を遮って、私はキッチンの方へ向かう。
「いいよ、着替えてきて。お水は用意しておくから」
「ありがとう」
私はそう言って寝室に入り、ため息をついた。そして部屋着に着替えるとダイニングへと向かった。
「朝の件だけど、私、本気だから」
「知っているよ」
「本当?」
「ニキって言いだしたら聞かないじゃない。本当に根が頑固っていうか。とにかく話してみないことにはわからないよ、その、相手とも」
本当は気が進まない。でもニキがそこまで言うのなら、会ってみてもいいかもしれない。私は自分が風見鶏になった気分だった。
「親になるっていうのは、本当に大変なことなんだよ、ニキ」
「知っている。自分の両親を見てきたから」
そう言われてしまうと、第一ラウンドは私の負け。朝、一緒に朝食をとったのに、ダイニングでテーブルを挟んで座って、こうやって話すのは久しぶりな気がした。私はニキの頭をぐしゃぐしゃと撫ぜた。
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