吹雪と兎

1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

吹雪と兎

繁華街のある大きな町で二人、 男と女は出会った。 「えと、吹雪さん?」 男が先に口を開いた。 「うん、そう。兎さん、だよね?」 二人の出会いは今時のSNS。 寂しい、と漏らした兎に、吹雪は「じゃ、私で時間潰しになるなら」 とリアル、現実世界で会うことを提案したのだった。 兎は喜んで快諾し、日時、場所を決めた。 そして当日。 「吹雪、って呼び捨てでもいい?」 兎がそう聞いたのも当然だ。 吹雪はどうみても25才以上、兎は20才前後だった。 「いいよ、私はウサさんて、呼ぶね」 吹雪は続けて言う。 「何で、兎っていうの?」 兎はちょっと目を逸らせて 「かまってくれないと死んじゃうから。――恋愛依存症なんだ」 吹雪は笑う。 「それは良かった。私、浮気性なの」 恋愛依存症と浮気性、二人の時計がカチリと重なりあった瞬間であった。 兎にも吹雪にも、恋人は居た。 だけど二人とも、それを只の認識としかとらえなかった。 兎は、常にかまってもらえないと寂しかったし、 吹雪は言葉通り浮気性だった。 「ねえ、吹雪。俺で、いいの?」 兎は何回もこの言葉を繰り返した。 その度に吹雪は 「何で?私、ウサさん好きよ」 と絡めた指に力を入れた。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!