第1章

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脅したり宥めたりすかしたりしてとにかく排尿を進めたが、彼に動く様子は無い。ただ下を向いて震えているだけである。 「ああ!もう、しょうがないなぁ!」 「何す、やめ、やめろっ!」 俺はお兄さんの腹の辺りを押してやり、さっさと楽にしてやろうとした。いい加減見ていられなくなったのだ。初めこそ舌を噛み切らんばかりに嫌がっていたが、そうこうしているうちに我慢が限界に達してきたか、私の執拗な追及から一時的にでも逃れようとしてか、大人しくなった。静かになった彼の様子を見ようと腹を押すのをやめると、切なげな瞳と目が合うが、すぐ俯いてしまう。まだ彼を切なくさせている、襲いくる水圧から体を解放してやる気は無いらしい。当然だが、顔色が良くない。呼吸も不規則で、なんだか変である。 「そんなに嫌なんですか?」 「……今はしたくない、我慢、する」 嘘にもほどがある。俺が近くにいるだけで催すのだから、同じ箱の中にいる状態で尿意が引くはずもない。 「顔色が酷いですよ。もう我慢しないほうがいいと思いますけど」 もう我慢していることも知られているのに。 俺は呆れて、とりあえず座り込んだ。正面から小さく吐息と共に声が聞こえてくる。 「……っく、ひ……」 え、お兄さん、 「泣いてるんですか?!」 「したいっ……おし、こ……っう、しだいぃ……」 あまりの尿意に正気でいられなくなったのか、割とずっと強気だったお兄さんはべそべそと尿意を訴えて泣き出してしまった。情緒不安定すぎやしないだろうか。さっきしたくないと言ったばかりだと言うのに。 「したらいいですよ?」 「軽蔑しない、か……?」 「今更じゃないですか?」 まだそんなことを気にしていたらしい。 「ほら、早くしてしまわないと、修理の人が来ますよ」 場はまた静かになった。お兄さんは気張るように顔を赤くして、しばらく奮闘していたが、 「……っあ、でな、出ないっ、なんで、……」 我慢をし過ぎたのか、はたまた常識的でないシチュエーションのせいか、排尿がままならないらしい。 俺は彼に近寄ると、下腹部をくっと押し込んだ。鍛えられていて硬い腹は、下方のみが不自然に膨らんでおり、お兄さんの苦しみを露わにしていた。 「ひ、あっ、ひゃ、やめて、いた、痛いっ……!」 「我慢するから痛いんですよ。大丈夫、ほら、力を抜いて」 「痛、いや、……っひう!?」 「お、出ましたか?」
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