第1話 星に願いを。

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 時計を見ると、もう昼過ぎどころか夕方になりかけていた。  気分がまるで良くない。僕は顔でも洗おうと部屋を出た。  洗面台の前に立つと、鏡にやつれた男の姿が映っていた。  髪の毛はボサボサで、目の下には大きなくまがあり、顔色も非常に悪い。  思わず鏡に向かって「大丈夫かお前」なんて声をかけてしまいそうな風貌である。僕は大きなため息をついて蛇口を捻った。  顔を洗い終えた僕はリビングに向かい、テレビをニュース番組に合わせた。  アナウンサーの読み上げるニュースを注意深くチェックするが、今日もハンマーを持った不審な女が捕まったといったような知らせはなかった。  もしやと思いスマホでネットのニュースも見てみるも、それらしい記事は一つも見当たらず。  僕は落胆して携帯の電源を切り、ソファーに投げ捨てた。  少しお腹が空いたので、キッチンへと向かう。  戸棚を開けるとカップ麺がいくつか転がっていたので、一つを選んで電気ポットのお湯を入れた。買い置きの食料もそろそろ底をつき始めている。  またネット通販で頼まなきゃいけないな。そんなことを漫然と考えていると、あっという間に三分が過ぎていた。  ピンポーン。  不意に、玄関のチャイムが鳴った。無心で柔らかめの麺をずるずる啜っている最中のことだったので、僕は大変に驚いた。麺が鼻の奥に入った。むせた。
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