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誰だ。誰だ誰だ誰だ?
咳き込みながら、心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じる。
まさか。あいつが。あの女が。いやいや落ち着け。そんなことはない。大丈夫だ。ゆっくりと深呼吸をした僕は、そっと息を殺した。
大抵の訪問者は、居留守を使えば帰ってくれる。宅配便だろうが新聞や宗教の勧誘だろうが関係ない。あの女の脅威が完全に消え去るまで、外との繋がりはできるだけ避けたかった。
ピーンポーン。無視。
ピーンポーン。無視。
ピンポーンピンポーン。無視無視。
ピーンポーン。……今回はいやにしつこいな。もしかして、やっぱりあの女なのか。背中にぞっと怖気が走った。どうしよう。もしこのまま居留守を続けたら、あの女が持っていたハンマーで玄関をぶち破ってくるかもしれない。そしたら一巻の終わりだ。
僕はあのテディベアと同じようにして殺される。それが丑の刻参りを見てしまった主人公の末路。やばい。警察を呼ぼう。しかし、来訪者があの女であるという確証はない。まずは確認をしとかないと……。
僕はなんとか気持ちを奮い立たせ、チャイムの鳴り続ける玄関へと向かった。
心臓がバクバクと暴れだし、身体が小刻みに震えている。
僕はこんなに怖がりだったのかと情けなく思う。だがそんなことも言ってられない。扉一つ向こうに、人殺し(の可能性も無きにしも非ずな人物)が立っているかもしれないのだ。
僕は音をたてないように細心の注意を払いながら、そっとドアスコープを覗いた。
いたのは、女だった。
でもあの女ではなかった。
僕と同じ学校の制服を着た女の子が三人、ドアの前に立っていた。一人はショートカットで、すごく活発そうな子。一人は眼鏡をかけ、俯き気味で地味な感じのする子。そしてもう一人は、前髪をヘアピンでとめた、ちょっと真面目そうな子だった。
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