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「鯨井桜人さんですか」ヘアピンの子がドア越しに問うてきた。
「あ、はい……」
「私はきさらぎ高校一年C組、立花(たちばな)夕子(ゆうこ)です」
やはりクラスメイトだったようだ。
「同じクラスの舞初(まいぞめ)はるかです」
眼鏡の子がぺこりと頭を下げた。
それに続くようにショートカットの子が「遠藤樹(えんどうじゅ)梨(り)でーす」と言いながらビシッと敬礼をして見せた。バカっぽい。
「鯨井さん、今日は話があって来ました。ドアを開けてください」
ヘアピンの子――立花さんはすごく丁寧に言葉を選んでいるようだったが、そこからは有無を言わせぬ強引さが感じられた。さっきからドアスコープに向けられる彼女の視線もかなり強烈で、扉一枚挟んでいるのに全身を鷲掴みにされているような心地がした。
「え、えっと……話ならこのままで」
「人と話すときは相手の目を見てからでなければいけません。ドアを開けてください」
「いや、でも」
「ドアを開けてください」
怖い。サイボーグかよこの人。
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