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このまま何を言っても彼女にぴしゃりと言い返されそうな気がして、僕は言葉に窮してしまった。すると見かねた遠藤さんが、立花さんの肩を嗜めるようにポンと叩いた。
「まあまあ、立花ちゃん。そんなんじゃ開けられるもんも開けられなくなっちゃうよ?」
おお。このショートカット、先程からアホっぽい行動がやたらと目についていたが、意外とまともな所もあるようだ。ショートカットは伊達じゃない。そんな遠藤さんが、今度は私の番とドアスコープに顔を近付けてきた。
「鯨井くーん、開けてよう。せっかく麗しの女子三人がこうやって遊びに来たんだからさー」
遠藤さんの横で立花さんが「私たちは遊びに来たわけではありません」と無表情のまま言った。どうにもこの人はお堅い性格らしい。後ろで舞初さんが困ったように笑っている。
「すみません……事情があるので開けられません。伝言があるのならここでお願いします。もし渡すものがあるならそこに置いといてもらえれば……」
僕は比較的喋りやすそうな遠藤さんに向けて、小さく答えた。
そうすると彼女は小さくため息をつき、ゆっくりと後ろに下がった。僕はほっと安堵してドアスコープから目を離した。よしよし。このまま大人しく帰ってくれれば……
「鯨井君ッ! あなたいったい私たちの中の誰を選ぶの!?」
破壊的な大声が、扉の向こうから突撃してきた。遠藤さんの声だった。慌ててドアスコープを覗くと、彼女は薄らと目に涙を浮かべ、天を仰ぐように両手を広げていた。
「ひどいわ同時に三人の女に手を出すなんて……でも私、あなたを好きな気持ち誰にも負けない! 答えてよ、鯨井君! 本当にあなたが愛してるのは」
僕は乱暴にドアを開け、音の速さで三人を家の中に引っ張り込んだ。
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