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「……どういうつもりですか何のつもりですか僕を社会的に殺す気ですか」
「へへ、演技上手いでしょあたし」
「なんで、そんな、誤解を招くような演技を、ご近所に響き渡る大声で、なさったのかと、聞いてるんです」
「やだあ狼狽えちゃって、ウブなんだから。もしかして鯨井君って童貞?」
けらけらと笑う遠藤さんを見て、僕はちょっと顔面の中心を強めに殴りたいと思った。
「鯨井さん、少し長くなりそうなので上がらせてもらってもいいですか」
「あ、はい……どうぞ」
立花さんの言葉に戸惑いがちに頷く。入れてしまったものはしょうがない。幸いハンマー女は現れなかったし、話を聞くだけ聞いてさっさと帰ってもらおう。僕はため息をつきながら「どうぞ」と三人を中へと促した。
「おっじゃまー」
「し、失礼します……」
何の躊躇いもなくずかずか入っていく遠藤さんと、それに遠慮がちに続く舞初さん。あぁ、何でこんなことになってるんだろう。女子高生が三人も家に来るなんて男にとって夢のシチュエーションのはずなのに、あんまり嬉しくない。なんだこの気持ち。
「お邪魔します」
最後に残った立花さんは、きちんと三人分の靴を揃えてから立ち上がった。真面目だ。所々の言動に多少の棘を感じるものの、礼儀正しいところは素直に感心する。
それに、よく見ると若干の幼さが残る顔は、普通にしていれば可愛い部類に入るように思う。
だとするならば、やはりそのお堅い性格がすごく勿体ない。学校でもだいぶ損しているはずだ。彼女が遠藤さんみたいに明るく笑ったならば、きっと大抵の男は壁に頭を打ち付けて死ぬだろう。おそらく僕も死ぬ。スタイルだって悪くないし、特に脚のラインなんか――――
そこで僕の思考は停止した。再起動するまでに、数秒を要した。
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