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他に生えている木よりも明らかに太く立派なその木は、幹にしめ縄が飾られていて、どうやらこの神社の御神木であるらしいことがわかった。
女は、それに向かって不気味に笑っていた。
「っふふ……うふふふ……」
ずっと気になっていた音の正体もわかった。
それは金槌が釘を打ち込む音だった。それも日曜大工などでよく使用されるような普通の金槌じゃない。
「ハンマー」という言葉の方がしっくりくるような、馬鹿でかい金槌だ。あんなのビルの解体映像とかでしか見たことがない。
僕の身長ほどある鎚はかなり重量もありそうなのに、女はそれを両手で軽々と持ち上げてみせた。そしてそのまま御神木目掛けてフルスイングしたかと思うと、またあの不快な金属音が神社中に鳴り響いた。
――――丑の刻参りだ。
すぐにそう判断した。
白装束を着た人間が藁人形に五寸釘を打ち付け、憎き相手を怪我させたり殺したりするという呪いの儀式。今の状況からして、あの女のしていることはそれに違いなかった。
「まじですか……」
思わず声を漏らしてしまい、慌てて口を塞ぐ。幸い女には気付かれていない様子だった。僕はホッと胸を撫で下ろし、もう一度女をよく観察した。
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