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猛烈な吐き気と共に目を覚ました。
嫌な汗で全身がねっとりと濡れていた。
またあの夜の夢を見てしまった。
数日前、あの不気味な女に出会ってしまった晩から、まともに眠れない日が続いている。今でも目を瞑ると、大きなハンマーで釘を打つ音、女の低い笑い声、そしてあの濁りきった視線が、瞼の裏に蘇ってくる。
あの夜、女に見つかってしまった僕は、なりふり構わずその場から逃げだした。
神社の石段を駆け下りる途中で振り返ると、女は立ったままじっとこちらを見つめていた。追ってくる様子はなかった。
それでも僕は家まで全力で走った。いつも通っている道のはずなのに、異様に長く感じた。
やっとの思いで帰宅した僕は、玄関と家にある全ての窓に鍵をかけた。
だがあの女が入ってくるんじゃないかという不安は拭えず、一晩中布団にくるまって震えていた。
気が付けば朝だった。カーテンの隙間から差し込む日差しにほっとして、僕は布団から抜け出した。
一体あれはなんだったのだろう。変質者がいたと警察に連絡するべきだろうか。
そんなことを考えながらも、温かいコーヒーを飲んでいるとなんとなく昨晩の出来事が夢のような気もしてきて、まぁ別に何かされたわけでもないしとりあえず友人に話すネタができたな、という悠長な結論に至った。
学校の制服に着替え、今日は授業中に寝ちゃうだろうなーなどと思いながら外に出ると、足先に何かが当たった。
テディイベアだった。
顔や腹に何十本もの釘が突き刺さっていた。
それ以来僕は、家から一歩も出ていない。
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