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世論は動いた。もっと、羊を捕獲しようと言い出したのか。声は大きくなかったが、世の中の雰囲気、そのように訴えだしていた。不景気があまりにも長すぎたのもあった。誰もが羊の恩恵にあずかりたいと思っていた。政治家にもしても景気の好調は自分達の評価を後押してくれるので、密かに根回しをし羊をもっと確保し調べるよう言った。
本来なら、それは危険な行為である。今回はサンプルと記念として一頭だけ捕獲してきたが、多く捕獲するとなると、その惑星に悪影響を及ぼすかもしれない。目先の欲に駆り立てられ、これまで幾度となく生物が絶滅していった苦い経験があるだけに探検隊は気は進まなかった。それでも、上からの命令である以上は逆らうこともできず、従うしかなかった。
大がかりな捕獲器を持って、惑星を再度、訪れた探検隊は一度に三十頭ほど捕獲する。これぐらいいれば十分だろうと判断して、地球に帰還した。誘拐しているような気分に悩まされつつ。
より多くの羊が地球に運ばれてくると、世の中は沸いた。これで、地球の不景気は完全に解消すると思ったからだ。これから、より大きく飛躍するだろうと。
しかし、今回これだけ連れて帰ってきたというのに、奇妙なことに景気は一向に回復する兆しをみせなかった。三十頭の羊をモデルに商品を発売するも、売れ行きはほどほどで、儲かっていると目に見えるほどの効果がなかった。その一方で、最初の羊だけは相変わらず人気はあった。どんな商品も次々と売れていく。確かに毛の色に違いこそ、あれど大きな差があるとは思えない。だが、現実に売れているのは当初の羊の関連グッズだけなのだ。
違いはなんであるのか、人々は考えた。そして、一つの結論に行き着いた。
それは、最初の羊だけ群れから離れた所で生活していた点だ。この羊は他とは違った何かを秘めていた。それが、景気に影響を与えたのだと。
三度、探検隊に羊を捕まえてくるよう命令がなされた。探検隊は乗り気ではなかったので、これまで捕まえてきた羊を故郷の惑星に返す代わりに特別な雰囲気がある羊を一匹、捕まえてくるように言った。
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