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 それならばと、渋々探検隊は重い腰を動かし、羊を捕獲することにした。これまで、捕獲してきた羊は全て、惑星に返され、代わりとなる羊を探すことになる。  目標は案外、簡単に見つかった。羊が群れをなしていない場所を重点的に調べた結果、森林地帯の奥に羊一頭だけいることが確認された。直ちに網が張られ羊は捕獲された。最初に捕獲した羊とは違い、見た目からもタダならぬ雰囲気を感じられた。これは、ただ事ではない。きっと、地球に大きな変革をもたらしてくれるだろう。  探検隊は自分達がやってきた行為を肯定するかのように言い聞かせて、羊を檻に閉じ込め地球につれて帰った。  惑星を離れていく地球の探検隊を羊達は見送っていた。彼らはずっと、「めぇ~、めぇ~」鳴いているだけで何を言っているのか探検隊には聞こえなかった。もし、ここに翻訳機があれば言葉を訳せただろう。 「いったい、あいつら何をしにきたのだろう」 「ああ。金運をもたらしてくれる我々の“神様”や仲間達を捕まえられた時は、どうしようと思ったくれど、返してくれた」 「その代わり、わざわざ、森の奥で動かないでいた災いの神を連れていくなんて。本当に何をしたかったのか?」 「さあ?」 地球人の不可解な行動に首を傾げるも、彼らはすぐに忘れて草を食べ始める。この惑星に災いをもたらす自分達によく似た姿をした“神”が持ち去られ、前より平和になった世界を満喫するかのように。
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