光が導くその先で……

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「あら?」  本を読んでいたその人は、龍一に気づくと首を傾げた。長い黒髪が、一緒に揺れる。 「迷子? 立ち入り禁止って書いてあったでしょ?」 「迷子じゃないよ。あのね、光がきらきらしてたのが気になったの」  言いながら階段を登り、その人のすぐ近くに立った。 「光?」  その人が首をかしげると、また、光った。 「あ、それだ」  指をさす。その人が首からかけているネックレス。 「ああ」  その人が持ち上げると、また光った。二枚のプレートがついたネックレス。 「そっか、うまい具合に光が当たって、反射しちゃうのか」  少し揺らして現象を理解すると、その人はネックレスを服の中にしまってしまった。きらきらしてて綺麗だったのに。 「文化祭だからいいかなと思ってつけてきたけど、慣れないことはしないほうがいいわね」  小さく呟く。 「ねえ、君。ここは立ち入り禁止だから戻ったほうがいいよ。お父さんとかお母さんは?」 「お母さんは立ち話してて、あとね、みやびがいるの」  答えると、その人はちょっと困った顔をした。 「ねぇ、おねえさんはこんなところで何してるの? ぶんかさい、しなくていいの?」  その困った顔に質問を投げる。なんでこんなところで一人で本を読んでるんだろう。 「あたしは……、いいの」 「さみしくないの?」 「大丈夫」  でも、さっきからちっとも笑わない。みんなワイワイしていて、楽しい空気なのに。  なんとか笑ってほしいなと思って、クラスでウケる変顔でもしようかと考えていると、 「龍一ー!!」  雅の怒声が聞こえた。 「ひっ」  思わず悲鳴が出る。
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