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「どこいったの!」
やばい、めちゃめちゃ怒ってる。
龍一の顔を見て、事態を理解したのか、その人はようやくクスリと一瞬、小さく笑った。
「君が龍一君ね? 探してるのはお姉さんかしら?」
「うん……」
「はやく行ったほうがいいよ。心配してる」
「怒ってるんだよぉ」
「怒ってるけど、心配してるよ」
ほら、と促されて、階段をちょっと降りる。
「ねぇ、でもおねえさん、また一人になっちゃうよ?」
こんな寂しいところで一人ぼっちだなんて。
「大丈夫だよ」
「でも……」
「龍一っ!」
「うっ」
確かに、はやくしないと雅が鬼になってしまう。
「それにね」
その人は傍に置いていた携帯電話を持ち上げて何かを見ながら、
「あたしのお迎えも来るから、大丈夫」
微笑んだ。
「一人じゃない?」
「ええ」
「そっか」
それにちょっと安心した。
「じゃあ、またね、お姉さん」
「ばいばい」
手を振って、階段を駆け下りた。
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