8/9
前へ
/51ページ
次へ
「こわいよね」  ポツリと漏らした低い声に反応し、首だけを捻って彼女を見ると、葱を刻んでいた手を止めて、眉を顰めてテレビの画面を見つめていた。  このニュースに対し、コメンテーターが無責任に不安を煽るような事ばかり語っているのが酷く鼻につき、TVを消す。 「まぁ、俺達には関係ない話だろ」  都内に住んでいる人口は1300万人を超えている。  そのうち俺達と同じ23区内にいる人間は900万人以上だ。  10人もの犠牲者が出ているとはいえ、俺からしてみたら、たかが10人。  都内で考えたら130万分の1。  23区内でも90万分の1の確率でしかない。  これは俺達が通っている大学の学生の中で、被害者になる確率は一人にも満たない確率だ。  よっぽど危機感のない奴か、運の悪い奴じゃなきゃ、こんなおかしな事件に巻き込まれるわけがない。  俺はそう高を括っていた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加