ＺＩＰＰＥＲ【ｅｐｉｓｏｄｅ ０】

Ⅲ

　午後から休講になった律子と午後から講義の俺は、彼女と入れ替わりで大学の敷地内に入った。

　家まで送って行こうかと連絡したのだが、大学で出来た女友達と買い物の約束をしているからと断られた。

　朝は、ニュースを見て「こわい」と言った彼女に「俺達には関係ないだろ」なんて言ってしまったが、わずかな確率でも彼女に危険が及ぶ確率があるのなら、ボディーガードの役割ぐらい買って出るぐらいワケない。

　面倒臭くても、過保護な彼氏と周りから冷やかされたとしても、もう二度と俺は大切なものを失いたくはない。

　その為だったら、何だってする。

　ただ、あまりにも彼女にベッタリでは、束縛魔のレッテルを貼られ、本人からもウザがられてしまう。

　お互い、他の友人関係も大切だし、彼女の意志や自由も尊重すべきだ。

　サークルの飲み会やバイトで帰りが遅くなる場合は、勿論、迎えに行くが、こんな昼間の明るい時間にまで、彼女の行動をとやかく言うつもりはない。