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「拓斗っ!」
俺を呼ぶ声に意識が一気に引き寄せられる。
目を覚ますと、心配そうな表情で俺の顏を覗き込む女性の、端正な顔立ちが視界一杯に広がった。
彼女は幼馴染の生谷 律子。
生まれた時からお隣さんで、兄妹のように言いたいことを言い合って育ってきた彼女とは、今では恋人同士だ。
スッキリとした鼻筋。
くっきりとした二重の大きな目に艶めかしい唇。
そのどれもが物心ついた時から見慣れているパーツであるにも関わらず、意思の強さを表しているかのような、しっかりとした眉を八の字に下げている彼女の顔だけは、どうしても見慣れない。
そんな顔をさせている原因が自分だと思うと、愛おしさと申し訳なさで、胸がキュッと締め付けられるような感じがする。
「拓斗、大丈夫? 酷く魘されていたけど……もしかして、また……」
ひんやりとした彼女の手が俺の頬を包み込む。
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