1人が本棚に入れています
本棚に追加
えーと……。まず何をしたらいいのか分からないので……、とりあえず自己紹介をすると、私の名前は墨谷香音(すみたに かのん)。高校2年生。
性格は内気。そして、自分でも「それはどうなのよ?」って思うくらい優柔不断で、自分じゃ何も決められない。
……だから。
「ノンちゃん、お願いがあるのー」
と、ある日の放課後、たいして親しくもないクラスメート達が馴れ馴れしくそう声を掛けてきても、「あなた達が、そのあだ名で私を呼ばないでください」とは、心の中では思っていても口に出しては言えない。だから実際は、
「……え? え?」
そんな感じで……ただ、おろおろするだけ。そんな自分が情けないとも思うけれど。でも、どうしたらいいのか分からないのだから仕方がない。
「今日あたし、用事があるから掃除当番代わって。おねがーい」
「え、えーと……」
戸惑う私の前には5人の同級生が、わざとらしい笑顔で立っている。
さて……、私はその中の誰と掃除当番を代わればいいのだろう?
そんな疑問を抱いていると、「それじゃ、頼んだわねー」「のんちゃんが用事がある時は代わってあげるから」とか言いながら、その全員が背を向けて……くすくす笑いながら教室を出て行った。
「あ、あう……」
私は……それを引き留めようと右手を差し出すことしかできなかった。
もちろん、私のそんなしぐさが相手に伝わるはずもなく……。
そして、誰も居なくなった教室を見回して頭をひねる。
「……私一人で、この教室を掃除しろと?」
やっと自分の考えがまとまった時にはもう何もかもが手遅れだった。
最初のコメントを投稿しよう!