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「……この場合、私は5回分掃除を代わってもらえるのかしら?」
うん、プラス思考でいけばそういうことになる。だって、5人分の掃除を代わってあげたのだから……。
でも、私はその貸しを返してもらうことは無いのだとも分かっている。
たぶん、それは相手も分かっているのだろう。
私が、「用事があるから、掃除当番代わって!」なんて、あの人たちには言えないことを……。
「まあ、ここで考えてても時間のムダよね……」
私はそう呟いて、誰も居なくなった教室の机を運ぶ。
だって、もし先生にこの状況を見られて、ことの顛末を尋ねられたら……それを上手く誤魔化すなんて話術は私には無いし、結局は正直に話すしかなくなるだろう。
そうすれば、あのクラスメート達は先生に怒られたりするんだろうけど……その結果、後になって彼女達に逆恨みされるのも面倒だし。
まったく迷惑な話……。
だって、他人を利用したいのなら、その人の特性というか欠点くらい把握しておくべきだと思うのよ。
その上で、もし……そういう事態が起こっちゃったら、それがバレて怒られるかも……、くらいのリスクは覚悟しておいてもらいたい。
そんな責任まで、この無能な私に勝手に背負わせて「あんたのせいだ!」なんて言われても……ねえ?
まあ、それでも私なりには、先生にバレないうちに掃除を終わらせようと努力しているんだけど、この努力はきっと誰も評価はしてくれない……。
私は孤独だ……。
そんなことをぼんやりと考えつつも、ただひたすら孤独に机を運んでいると男の人の声がした。
「住谷さん、一人で掃除?」
「え? あ、あの……」
私は一瞬、担任の先生かと思って慌ててしまったけど、その声の主はクラスメートの野村君だった。
で、私はあらためて──
「あ、あわわわ……」
と、慌て直していた。
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