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「今まで住谷さんは、いつも仲居に守られてるみたいな感じだったからなぁ」
「……う、うん」
それは言われなくても分かっていた。
私が今まで自己主張をしてこなかったのは、その必要が無かったからだと言ってもいい。小学校の頃から親友だった真由ちゃんが、いつもそばに居て私の言いたいことを代わりに言ってくれていたからだ。そうして、私を守ってくれていたのが真由ちゃんだった。
だから、こんな性格の私なのに、今までの学校生活でイジメに合ったことは無い。真由ちゃんがいつも私を助けてくれたから……。
「あいつは登校拒否なんてガラじゃないのに、なんで学校に来ないんだ? 住谷さん聞いてない?」
「う……うん。なんだか、色々と忙しくなったから学校にも行けないし会うこともできないけど、ケガや病気じゃないから心配しなくていいって、メールで連絡があったきりで……」
「その後、住谷さんから携帯とかメールとかしてみたの?」
「う、うん……。なんか、ホントに忙しそうだったし、こっちから連絡入れて迷惑になっても悪いし……」
それは本当。
でも、嘘でもある。
本当は、こっちから何を話せばいいのか、何を聞けばいいのかが私一人では思い付かない。というか、決められないのだった……。
だって、いっつも真由ちゃんと会話をする時は、いつも真由ちゃんの方から話し掛けてきてくれてたから……。
いつだって私が何を話そうか私が迷ってる間に、幼なじみの真由ちゃんはそれを察してくれて、私が思ってること、望んでいることを、先回りして話してくれていた……。
だから私はいままで、自分の考えを自分で言葉にする必要なんて無かったのに……。
そんな感じのことを、言葉にできないまま漠然と考えていると、まるでそれを察したかのように野村君が言った。
「もしかしたら、中井は住谷さんからの連絡を待ってるのかもしれないよ?」
「……え?」
「だから、いつも内気な感じで、自分からは何もできない君を変えようとして、わざと一人の状態にしているのかも? ってさ」
野村君はそう言って、笑顔でウインクしてみせた。
その笑顔が素敵すぎる! もう、真由ちゃんのことなんてどうでもいいやって気持ちになってしまうくらい私の心が浮き立って……いやいやいや……それは駄目でしょう。話を──というか私の心を元に戻さなければ……。
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