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「大丈夫かい?」
オロオロと泣くしかできなかった私に、野村君はさわやかな笑顔でそう言ってくれ……。
その時に、騒ぎに気付いた真由ちゃんがやってきて……。
ついでに、お巡りさんもやってきて……。
真由ちゃんはお巡りさんに言った。
「こいつらが、この子にいたずらしようとしたんです!!」
と、野村君も含めて指差しながら……。
「え? ええ!? そ、そうじゃなくて……」
言いかけた私の口を塞ぐかのように、真由ちゃんは私をぎゅっと抱きしめて……。私は、彼女の胸で口をふさがれるような格好で、何も言えない間に、野村君は弁解むなしく、おじさん達と一緒にパトカーに連れていかれてしまった……。
……それが単なる真由ちゃんの勘違いではなく、たぶん確信的にやっているのだからタチが悪いとしか言いようが無い……。
つまり、野村君は「私と話をした」……というか、「私に声を掛けた」という罪で警察送りになったのだ……。
真由ちゃんの中の法律で……。
それで、私に芽生えかけた初恋は終わり……。
の、筈だったのだけれど……。
それから数日後。野村君が、私のクラスに転校してきたのだ。
もう、漫画みたいな偶然なのだけれど……。
私は、その偶然に心から感謝した。
一方、真由ちゃんはその偶然に、クラス中に響き渡るくらいの歯ぎしりをした。
野村君は……。その歯ぎしりに気を取られて、というか真由ちゃんの記憶が強烈過ぎて、すぐには私に気付いてくれなかった……のだけれど……。
……あれ? これ、私の親友の話だよね?
……こんな女の子が私の唯一の親友でいいの!?
という感じなんだけど、私は真由ちゃんのことが嫌いにはなれなかった。
だって、真由ちゃんは私を誰よりも理解してくれるんだもん。……野村君に関すること以外は……。
そうなると、真由ちゃんを選ぶか野村君を選ぶかという話になるんだけど……私は、その決断ができなかった。
そうこうしているうちに、野村君が転校してから一か月が経って突然――真由ちゃんが登校拒否を始めて……。
その結果、真由ちゃんの露骨な妨害工作が無くなって、野村君との距離は縮まってきてはいるんだけど……私は「できたら3人で仲良くしたいなぁ……」と思った……。
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