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初冬に入った風の強い日、私は彼女たちよりも少し早めに教室を出て家庭科室に急いだ。それから、いつも彼女たちが陣取っている席を占領した。
移動教室に決まった席順はないから、授業のたびに変えたって何の差しつかえもない。あるのはただ、ここはおおむね誰々たちが座るエリア、という『暗黙の了解』だけ。
つまり、彼女たちと関わりだして約七カ月目の今日、私は初めて自分から喧嘩をふっかけたのだった。
それなのに胸の鼓動はバクバクと音を立てて私を苛む。やっぱりやめれば良かったかな、こんなこと……。
考えてもみて、相手は六人。勝ち目なんてどこにもない。でも今さら、席を立つなんて悔しい。
……私は何も悪いことなんてしていない。ただ先に来たから好きな席に座った、それだけのこと。何度も自分に言い聞かせても、胸の動悸がなりやまない。
そうしてついに彼女たちが現れた。目的の席に収まる私を見るや、たちまち不機嫌に顔を歪ませる。新参者の彼女がハーッとわざとらしくため息をつけば、次にグループの中心的な美人が、
「どいてよ。そこ私たちの席なんですけど」
怒声を上げ、腕組みに眉根を寄せて迫りくる。
歪んだ輪郭が醜い。美人もこうなってはおしまいだな、と妙に冷めた目で見る自分が一割、窮地に立つ緊張と冷や汗で卒倒しそうな自分が九割。
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