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「あっち空いてんじゃん」
「何でわざわざ……」
他のメンバーが次々に口を出す。
何でわざわざって? 嫌がらせに決まってるじゃない。やられっぱなしで良しだなんて思うわけないでしょう、私にも心があるの。
胸の中には無数の抗議が飛び交うのに、現実には一言だって言い返せやしない。
悔しい。
悔しい。
あんたたちなんて、あんたなんて大嫌い。
なのに言い返せない自分は、もっともっと、もっと嫌い。
パニックに涙が出そうだけれど、そうしたら彼女たちの思うつぼ。あのいびつな笑みだけはどうしても見たくないの。
落ちついて、私は大丈夫、大丈夫。
ロッカーの隅の通学カバン、そのサイドポケットの短編集、大好きな『デューク』……クライマックスシーンに収まる栞のコスモス、その花の赤さ。
思い出して、そうしたら、きっときっと冷静になれるから……。
結局、席を立ちあがった私はその場所を彼女たちに明け渡し、降伏してしまった――。
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