宇宙に去る

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それは衛星軌道上を泳ぐように接近してきた。 「な、なんだろう?」 Aさんは驚きながら目を凝らした。 やがて接近してくるものが、はっきりと視認できる距離まできた。 それは人間大の大きさで、人の形をしたものだった。 大きな目にぶくぶくした肌をもつ人型のものが、窓まで近づいて見守るAさんと目が合った。 なにかを叫ぶように口が動き、宇宙ステーションにつかまろうとバタバタと手足を動かしていた。 まるで窓を破って侵入する勢いで暴れているではないか。 キィーキィー。 それは窓を引っ掻く音か。 Aさんはあまりの怪異に凍りついた。 だが宇宙ステーションに侵入することなく、人型の怪異は宇宙空間を流れ去っていった。
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