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「そんな話を信じますか?」
Aさんが苦笑しながら言うので、思わず訊き返した。
「それは宇宙人ですか?」
「いいえ。あれは宇宙開発の犠牲者でした」
「宇宙開発で失敗した宇宙飛行士ですか?」
「後で調べて判明したのですが、1980年代のソ連でビオン計画というものがあったのですよ」
「それはなんですか?」
「モルモットなどの動物を使って、人工衛星の実験をする宇宙計画ですね」
「それでは……?」
「わたしが目撃したのは、ビオン計画で宇宙に飛ばされた、毛を剃ったサルの幽霊だったのでしょうか?」
Aさんは首をひねりながら言った。
宇宙空間では体が2倍にまで膨らむという。
だがビオン計画で使われたサルに毛を剃ったという事実は確認できなかった。
その謎を秘めた未知の怪異は、いまも地球の周りをさまよっているのだろうか。
──宇宙に去る 終。
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