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PM 9:00
ドォーン…ドドドド…パラパラパラ…
ドォーン…ドンドン…
「もう、花火も終わりだね」
「そうだね。綺麗だったなぁ。特に、あの青い光が素敵だったなぁ。」
「ねぇ、優ちゃん。」
「何、りっくん」
打ち上がる花火を見上げていた。大きな音、心臓まで響くような振動。暑い夏の匂い。有名な花火大会だが、人の賑わいはなく今は俺達二人がいるだけ。山の高台から見えるこのスポットは誰にも知られてない穴場だ。優の家のすぐ近くにある。
暗がりから、花火の光で時折照らされる彼女の横顔は思わず見とれる程に素敵だった。意を決して、この時の為に用意した言葉を伝えた。
「優、好きだよ。俺と付き合って欲しい。」
たったこれだけの言葉。どう伝えるか色々考えていたのに、いざ本人を目の前にすると頭が真っ白になった。でも偽りのない心からの真っ直ぐな気持ち。
目を背けた優は少し間をおいて返事をした。
「…こんな私でよければ」
照れながらも微笑みを浮かべた彼女の表情は本当に綺麗だ。俺は衝動を抑えることができず微笑み返すと彼女を優しく抱き寄せた。
「また、来年も一緒に見ようね」
「うん、約束だよ。忘れないでね」
「忘れるわけないだろ」
俺の名前は力斗(りきと)。両親は何事にも負けず力強く生きて欲しいという願いを込めたそうだ。
彼女の名前は優(ゆう)。名前のまんま優しさを、形にしたような女の子。
俺にだけ見せてくれる柔らかな表情。並ぶと肩ぐらいまでしかない小さな体。大好きな優しい声。ふんわりとした癒される空気感。
この瞬間からは俺は自分の力の全てをかけて、優しい彼女を守ろうと心に誓った。
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