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「児童会長は忙しいんだ。夏休み入ったら遊んでもらえ」
「わかったー、未来兄ちゃん、今日何して遊ぶ?」
「宿題終わらせてからだ、雨降りそうだから、外じゃ遊べねぇかもな。ほれ、宿題してこい」
「はーい」
愛夢はようやく、弥子の手を離して、施設に入った。
「悪いな、愛夢が」
「いいよ。また遊ぼうって言っていおいて」
「ああ………」
返事をしながら未来は、弥子の顔をじっと見る。
「?」
弥子は不思議そうに首を傾げた。
「……体調良くないでしょ。あまり物事が考えられてない。早く帰って休んだほうがいい。一時間ほど寝るだけでもだいぶ違うから」
「わ…かった。そうする」
「ああ、お大事に」
未来と別れて、弥子は家に帰った。帰ったところで誰もいないので、そのまま部屋に入って、未来の言ったように一時間後に目覚ましをかけて、少し眠った。
「……」
一時間後目覚ましの音で目が覚めて、身体を起こしたら、軽いのが分かった。
「すごい…」
冴えた頭で、今からやることを整理して、先に宿題を取り出した。
「…いつもより楽…」
いつも億劫な宿題だが、眠ったことにより頭がすっきりとして、だるさも抜けたので、サクサクと終わらせて、その調子で絵の仕上げをした。
絵も終わったところで、玄関から音がした。
母親が帰ってきたのである。
弥子は身体をびくりとさせて、すぐに塾のテストとノートを取り出した。
「弥子ー」
母親はノックもせずに弥子の部屋に入ってきた。
「お帰り、お母さん」
「ああ、ちゃんと勉強してたのね? 中学までの時期はとても大切なのよ、私立の中学はレベルも高いんだから」
「う、うん」
そういいつつ、母親は部屋から出る。
「私立なんて行きたくないのに…」
弥子のつぶやきは誰にも聞こえずに消えた。
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